ドロップシッピングの契約を結んだが説明と違って収入が得られない。
相談内容
ホームページ上の広告を見てXという事業者と契約を締結した。ドロップシッピングの契約である。商品の販売価格等をXから提案され、ネット上のショップで販売を行う。自分は、サイト上で客から注文をXに連絡したり、購入者からのメールでの照会に答えるという作業を行うことになる。仕入れ値と販売した価格の差額が自分の収入となることになる。
契約にあたりXから受けた説明では、「ネット上にホームページを開設してから1か月後には、200万円の収入を得ることが可能だ。そのための方法を教える。SEOで1位にしてみせる。」ということであった。Xの説明を信用し、2009年10月、Xから指定された口座に59万8千円を振り込んだ。その後、11月にXに作成依頼したホームページがアップされ、ネットショップを開設したが、1か月が経過したが収入は全くなかった。Xが言っていた「1か月で200万円の収入が得られる」との説明と事実が異なると思い、その旨をメールでXに伝えてが、Xから返信のメールはなく、電話をしても確認しますと言うのみで何の対応もしてもらえなかった。自分がXに厳しく苦情を伝えた後は、一切、契約内容にあったSEO対策などのサポートを行わなくなった。契約から3か月後、本件について、Xに解約の意思を伝えたところ、「契約締結前に渡した利用規約にクーリング・オフについて記載があるのでクーリング・オフはできない。」と言われている。Xとの契約を解除し支払った代金の返金を求めることはできないか。
※ この事例のように、販売する商品や提供される役務を利用する仕事を提供するのでそれに従事することにより利益が得られると言って誘引し、商品を販売したり、サービスを受けさせる取引を業務提供誘引販売取引といいます。いわゆるドロップシッピングの場合、ホームページ作成の役務の提供契約を締結し、その提供されたホームページを利用して、在庫管理等を行う業者の商品の広告や注文等の対応などを行う仕事に従事し、ホームページを作成した事業者から報酬を得る形をとっているようなものであれば、業務提供誘引販売に該当することになります。
ここに注意!
特定商取引法では、業務提供誘引販売業を行う者は、勧誘に先立って、その相手方に対し、自らの氏名又は名称、商品等の種類、及び金銭上の負担(特定負担)を伴う取引についての勧誘をする目的である旨明示しなければなりません。
仕事に就くため又は収入を得るために、仕事の提供やあっせんをする事業者から選考して多額の商品を購入したり、高額な加盟料等を負担しなければならないということは、常識的に考えにくいところです。また、最初に高額な商品を購入するものの業務が提供され収入が得られるのでクレジットでの返済も容易であると思っても、実際には思ったような収入が得られないこともあります。また、販売される商品が業務を行うに当たっての教材等でその教材等によって自己研修することを求めているような場合には、仕事の提供に当たって、契約者の能力が仕事を提供する能力に達していないなどとして、事業者が仕事の提供を渋るケースなども多く見られています。いわゆるドロップシッピングの場合では、思うように商品が売れないとか、売れ筋の商品の提供がないなど、当初勧誘を受けたときと状況が異なるケースも見られます。契約の前に、業務を実際に提供するとされている会社に詳しい説明を求めたり、ホームページで当該事業者の情報を点検するなど、慎重に対応することが必要です。
- 業務提供誘引販売業を行う者には、特定商取引法によって、その業務提供誘引販売業の概要について記載された書面及び契約内容を明らかにした書面の交付が義務付けられています。
- 合格率、合格者数、仕事量、平均収入、仕入原価、小売差益などはこれらの書面をもらって良く確認しましょう。
消費者の方々へのアドバイス
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業務提供誘引販売業を行う者は業務提供誘引販売取引における氏名等の明示が義務づけられています。事業者は、その勧誘に先立って、その相手方に対して業者の氏名又は名称、特定負担を伴う取引について勧誘をする目的である旨、商品(役務)の種類を明らかにしなくてはなりません。
(法第51条の2) -
特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をするためのものであることを隠して同行させた者等に対し、公衆の出入りする場所以外の場所(例:事業者の事務所、個人の住居、ホテルの部屋や会議室、公共施設等の会議室、カラオケボックス、貸し切り状態の飲食店等)で勧誘することは禁止されています。
(法第52条3項) -
契約書面を受領した日から20日間はクーリング・オフができます。
事業者の側に契約の解除について不実告知又は威迫行為があり、消費者が誤認又は困惑してクーリング・オフを行わなかったときは、クーリング・オフ期限が延長されます。
(法第58条) -
勧誘に際して事業者側の不実告知や重要事項の故意の不告知により消費者が誤認して行った契約の申込みや承諾の意思表示は、取消しができます。
(法第58条の2) -
クレジット契約をしようとする場合は、クレジット会社は、加盟店が業務提供誘引販売取引業を一部でも行っている場合には、業務提供誘引販売取引に該当するか否かを確認するため、消費者に対する本人確認に際し、「販売契約(又は役務の提供契約)の締結に際して、仕事が提供される、又は、仕事があっせんされるという勧誘はありませんでしたか。」、「提供又はあっせんされた仕事の報酬で商品の代金を支払うつもりはありませんか。」と明示的に聞いて確認することが求められています。
クレジット会社には、販売業者から受けた勧誘の内容や受領した契約書面やパンフレットなどの内容をできる限り詳しく説明するようにしましょう。
【契約をしてしまったら】
<1.クーリング・オフ制度>
業務提供誘引販売取引の場合には、事業者から契約内容を記載した書面を受領してから20日以内であれば、書面によりクーリング・オフ(契約の解除)ができます。
<2.契約の意思表示の取消>
勧誘に際して事業者側の不実告知や重要事項の故意の不告知により消費者が誤認して行った契約の申込みや承諾の意思表示は、取消しができます。
<3.クーリング・オフ妨害があった場合>
事業者の側に契約の解除について不実告知又は威迫行為があり、それにより消費者が誤認又は困惑してクーリング・オフを行わなかったときは、契約内容を記載した書面を受領してから20日を経過していても、新たにクーリング・オフができる旨を明示した書面を交付した日から20日経過するまでクーリング・オフができます。