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連鎖販売取引

個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務の取引のこと。

(以下の内容は概要です。詳しくは、特定商取引法の条文の該当部分を御覧ください。)

特定商取引法の規制対象となる「連鎖販売取引」

1.特定商取引法の規制対象となる「連鎖販売取引」 (法第33条)

特定商取引法は、「連鎖販売業」を次のように規定しています。

  • 物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。)の販売(又は役務の提供など)の事業であって
  • 再販売、受託販売若しくは販売のあっせん(又は同種役務の提供若しくは役務提供のあっせん)をする者を
  • 特定利益が得られると誘引し
  • 特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの
解説

具体的には、「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので、他人を誘ってその人に売れば儲かります」とか「他の人を勧誘して入会させると1万円の紹介料がもらえます」などと言って人々を勧誘し(このような利益を「特定利益」といいます)、取引を行うための条件として、1円以上の負担をさせる(この負担を「特定負担」といいます。)場合であれば「連鎖販売取引」に該当します。
実態はもっと複雑で多様な契約形態をとっているものも多くありますが、入会金、保証金、サンプル商品、商品などの名目を問わず、取引を行うために何らかの金銭負担があるものは全て「連鎖販売取引」に該当します。

連鎖販売取引に対する規制

【行政規制】

1.氏名等の明示(法第33条の2)

統括者(連鎖販売業を実質的に掌握している者)、勧誘者(統括者が勧誘を行わせる者)又は一般連鎖販売業者(統括者又は勧誘者以外の連鎖販売業を行う者)は、連鎖販売取引をしようとするときは、勧誘に先立って、消費者に対して、次のような事項を告げなければなりません。

  • 統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者の氏名(名称)(勧誘者、一般連鎖販売業者にあっては統括者の氏名(名称)を含む)
  • 特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨
  • その勧誘に係る商品又は役務の種類

2.禁止行為(法第34条)

特定商取引法は、統括者又は勧誘者が契約の締結についての勧誘を行う際、又は取引の相手方に契約を解除させないようにするために、嘘をつくことや威迫して困惑させるなどの不当な行為を禁止しています。具体的には以下のようなことが禁じられています。

  • 契約の締結について勧誘を行う際、又は契約の解除を妨げるために、商品の品質・性能、特定利益、特定負担、契約解除の条件、そのほかの重要事項等について事実を告げないこと、あるいは事実と違うことを告げること。
  • 契約を締結させ、又は契約の解除を妨げるために、相手方を威迫して困惑させること。
  • 勧誘目的を告げない誘引方法(いわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールスと同様の方法)によって誘った消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘を行うこと。

3.広告の表示(法第35条)

統括者、勧誘者、一般連鎖販売業者は、その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引について広告する場合には、以下のような事項を表示することが義務付けられています。

  • 商品(役務)の種類
  • 取引に伴う特定負担に関する事項
  • 特定利益について広告をするときにはその計算方法
  • 統括者等の氏名(名称)、住所、電話番号
  • 統括者等が法人で、電子情報処理組織を使用する方法によって広告をする場合には、当該統括者等の代表者又は連鎖販売業に関する業務の責任者の氏名
  • 統括者等が外国法人又は外国に住所を有する個人であって、国内に事務所等を有する場合には、その所在場所及び電話番号
  • 商品名
  • 電子メールにより広告を送る場合には、統括者などの電子メールアドレス

4.誇大広告等の禁止(法第36条)

特定商取引法は、誇大広告や著しく事実と相違する内容の広告による消費者トラブルを未然に防止するため、表示事項などについて、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。

5.未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(法第36条の3)

消費者があらかじめ承諾しない限り、統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者が連鎖販売取引電子メール広告を送信することを、原則禁止しています(オプトイン規制)。
この規制は、連鎖販売事業者のみならず、連鎖販売取引電子メール広告受託事業者も対象となります。したがって、当該電子メール広告の提供について、消費者から承諾や請求を受けた場合は、最後に電子メール広告を送信した日から3年間、その承諾や請求があった記録を保存することが必要です。以下のような場合は、規制の対象外となります。

  • 契約の成立、注文確認、発送通知などに付随した広告
    契約内容や契約履行に関する通知など、重要な事項を通知するメールの一部に広告が含まれる場合
  • メルマガに付随した広告
    消費者からの請求や承諾を得て送信する電子メールの一部に広告を記載する場合
  • フリーメール等に付随した広告
    インターネット上で、無料でメールアドレスを取得できるサービスで、無料の条件として、利用者がそのアドレスからメールを送ると、当該メールに広告が記載されるものなどの一部に広告を記載する場合

6.書面の交付(法第37条)

特定商取引法は、連鎖販売業を行う者が連鎖販売取引について契約する場合、それぞれ以下の書面を消費者に渡さなければならないと定めています。

A.契約の締結前には、当該連鎖販売業の概要を記載した書面(概要書面) を渡さなくてはなりません。

「概要書面」には、以下の事項を記載することが定められています。

  • 統括者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 連鎖販売業を行う者が統括者でない場合には、当該連鎖販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 商品の種類、性能、品質に関する重要な事項(権利、役務の種類及びこれらの内容に関する重要な事項)
  • 商品名
  • 商品の販売価格、引渡時期及び方法その他の販売条件に関する重要な事項(権利の販売条件、役務の提供条件に関する重要な事項)
  • 特定利益に関する事項
  • 特定負担の内容
  • 契約の解除の条件その他の契約に関する重要な事項
  • 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
  • 法第34条に規定する禁止行為に関する事項

B.契約の締結後には、遅滞なく、契約内容について明らかにした書面(契約書面)を渡さなくてはなりません。

「契約書面」には、以下の事項を記載することが定められています。

  • 商品の種類、性能、品質に関する事項(権利、役務の種類及びこれらの内容に関する事項)
  • 商品の再販売、受託販売、販売のあっせん(同種役務の提供、役務の提供のあっせん)についての条件に関する事項
  • 特定負担に関する事項
  • 連鎖販売契約の解除に関する事項
  • 統括者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 連鎖販売業を行う者が統括者でない場合には、当該連鎖販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 契約年月日
  • 商標、商号その他特定の表示に関する事項
  • 特定利益に関する事項
  • 特定負担以外の義務についての定めがあるときには、その内容
  • 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
  • 法第34条に規定する禁止行為に関する事項
解説

そのほか消費者に対する注意事項として、書面をよく読むべきことを、赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。また、契約書面におけるクーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。さらに、書面の字及び数字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。

7.行政処分・罰則

上記のような行政規制に違反した者は、業務改善の指示(法第38条第1項から第3項まで)や取引等停止命令(法第39条第1項前段、第2項前段、第3項前段)、役員等の業務禁止命令(法第39条の2第1項から第3項まで)等の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。

【民事ルール】

8.契約の解除(クーリング・オフ制度)(法第40条)

連鎖販売取引の際、消費者(無店舗個人)が契約を締結した場合でも、法律で決められた書面を受け取った日(商品の引渡しの方が後である場合には、その日)から数えて20日以内であれば、消費者は連鎖販売業を行う者に対して、書面又は電磁的記録により契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。

なお、連鎖販売業を行う者が、事実と違うことを言ったり威迫したりすることにより、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、上記期間を経過していても、消費者はクーリング・オフをすることができます(クーリング・オフを行う際には、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便などで行うことが薦められます。また、電磁的記録の場合には、例えば、電子メールであれば送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトのクーリング・オフ専用フォーム等であれば画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいと考えられます。)。

なお、この場合、業者は契約の解除に伴う損害賠償や違約金の支払を請求できず、商品の引取り費用も業者の負担となります。ただし、原状回復義務については、契約を解除する双方が負うことになります。業者は支払われた代金、取引料を返還するとともに、消費者は引渡しを受けた商品を業者に返還しなければなりません。

9.中途解約・返品ルール(法第40条の2)

連鎖販売契約を結んで組織に入会した消費者(無店舗個人)は、クーリング・オフ期間の経過後も、将来に向かって連鎖販売契約を解除できます。そのようにして退会した消費者は、以下の条件を全て満たせば、商品販売契約を解除することができます。

  • 入会後1年を経過していないこと
  • 引渡しを受けてから90日を経過してない商品であること
  • 商品を再販売していないこと
  • 商品を使用又は消費していないこと(商品の販売を行った者がその商品を使用又は消費させた場合を除く)
  • 自らの責任で商品を滅失又はき損していないこと

なお、本条の概略を図示すると以下のとおりになります。

40条の2(第1項〜第4項)の構成

10.契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し(法第40条の3)

連鎖販売業を行う者が、契約の締結について勧誘をする際、以下の行為をしたことにより、消費者がそれぞれ以下の誤認をし、それによって契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときには、その意思表示を取り消すことができます。

  • 事実と違うことを告げられた場合であって、その告げられた内容が事実であると誤認した場合
  • 故意に事実を告げられなかった場合であって、その事実が存在しないと誤認した場合

11.事業者の行為の差止請求(法第58条の21)

統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者が以下の行為を不特定かつ多数の者に、現に行い、又は行うおそれがあるときは、適格消費者団体は、それぞれの者に対し(勧誘者の行為については統括者に対しても)、行為の停止若しくは予防、その他の必要な措置をとることを請求できます。

  • 契約の締結について勧誘を行う際、又は契約の解除を妨げるために、事実と違うことを告げる行為又は故意に事実を告げない行為
  • 契約を締結させ、又は契約の解除を妨げるため、威迫して困惑させる行為
  • 誇大広告等をする行為
  • 連鎖販売取引につき、利益が生ずることが確実であると誤解させる断定的判断の提供により契約締結を勧誘する行為
  • 消費者に不利な特約、契約解除に伴う損害賠償額の制限に反する特約を含む契約の締結行為