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特定継続的役務提供

長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと。現在、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の7つの役務が対象とされています。

(以下の内容は概要です。詳しくは、特定商取引法の条文の該当部分を御覧ください。)

特定継続的役務提供に関するQ&Aはこちら

特定継続的役務提供(美容医療分野)に関するQ&Aはこちら

特定商取引法の規制対象となる「特定継続的役務提供」

1.販売形態(法第41条)

「役務(えきむ)」とはいわゆるサービスのことで、「特定継続的役務提供」とは、政令で定める「特定継続的役務」(※)を、一定期間を超える期間にわたり、一定金額を超える対価を受け取って提供することを意味します。これには役務提供を受ける権利の販売も含まれ、「特定権利販売」と呼ばれます。上記要件に該当すれば、店頭契約も規制対象となります。

(※)「特定継続的役務」とは、役務の提供を受ける者の身体の美化、知識・技能の向上などの目的を実現させることをもって誘引されるが、その目的の実現が確実でないという特徴を持つ有償の役務のことを意味します。

2.指定役務

現在、以下の7役務が特定継続的役務として指定されています。

特定継続的役務 期間 金額
いわゆるエステティック
人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと
(いわゆる美容医療に該当するものを除く)
1月を
超えるもの
いずれも5万円を
超えるもの
いわゆる美容医療
人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと(美容を目的とするものであって、主務省令で定める方法によるものに限る)
1月を
超えるもの
いわゆる語学教室
語学の教授(入学試験に備えるため又は大学以外の学校における教育の補習のための学力の教授に該当するものを除く)
2月を
超えるもの
いわゆる家庭教師
学校(幼稚園及び小学校を除く)の入学試験に備えるため又は学校教育(幼稚園及び大学を除く)の補習のための学力の教授(いわゆる学習塾以外の場所において提供されるものに限る)
2月を
超えるもの
いわゆる学習塾
学校(幼稚園及び小学校を除く)の入学試験に備えるため又は学校教育の補習のための学校(幼稚園及び大学を除く)の児童、生徒又は学生を対象とした学力の教授(役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る)
2月を
超えるもの
いわゆるパソコン教室
電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授
2月を
超えるもの
いわゆる結婚相手紹介サービス
結婚を希望する者への異性の紹介
2月を
超えるもの

(※1)「家庭教師」及び「学習塾」には、幼稚園又は小学校に入学するためのいわゆる「お受験」対策は含まれません。「学習塾」には、浪人生のみを対象にした役務(コース)は対象になりません(高校生と浪人生が両方含まれるコースは全体として対象になります。)。

(※2)入学金、受講料、教材費、関連商品の販売など、契約金の総額が5万円を超えていると対象になります。

(※3)役務の内容がファックスや電話、インターネット、郵便等を用いて行われる場合も広く含まれます。

3.適用除外(法第50条)

以下の場合などには、特定商取引法が適用されません。

  • 営業のため、又は営業として締結するもの
  • 海外にいる人に対する販売又は役務の提供
  • 国、地方公共団体が行う販売又は役務の提供
  • 特別法に基づく組合、公務員の職員団体、労働組合がそれぞれの組合員に対して行う販売又は役務の提供
  • 事業者がその従業員に対して行った販売又は役務の提供の場合

特定継続的役務提供に対する規制

【行政規制】

1.書面の交付(法第42条)

特定商取引法は、事業者が特定継続的役務提供(特定権利販売)について契約する場合には、それぞれ以下の書面を消費者に渡さなければならないと定めています。

A.契約の締結前には、当該契約の概要を記載した書面(概要書面)を渡さなくてはなりません。

「概要書面」には、以下の事項を記載することが定められています。

  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 役務の内容
  • 購入が必要な商品がある場合にはその商品名、種類、数量
  • 役務の対価(権利の販売価格)その他の支払わなければならない金銭の概算額
  • 上記の金銭の支払時期、方法
  • 役務の提供期間
  • クーリング・オフに関する事項
  • 中途解約に関する事項
  • 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
  • 前受金の保全に関する事項
  • 特約があるときには、その内容

B.契約の締結後には、遅滞なく、契約内容について明らかにした書面(契約書面)を渡さなければなりません。

「契約書面」には、以下の事項を記載することが定められています。

  • 役務(権利)の内容、購入が必要な商品がある場合にはその商品名
  • 役務の対価(権利の販売価格)その他の支払わなければならない金銭の額
  • 上記の金銭の支払時期、方法
  • 役務の提供期間
  • クーリング・オフに関する事項
  • 中途解約に関する事項
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 契約の締結を担当した者の氏名
  • 契約の締結の年月日
  • 購入が必要な商品がある場合には、その種類、数量
  • 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
  • 前受金の保全措置の有無、その内容
  • 購入が必要な商品がある場合には、その商品を販売する業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 特約があるときには、その内容
解説
そのほか消費者に対する注意事項として、書面をよく読むべきことを赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。また、契約書面におけるクーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。さらに、書面の字及び数字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。

2.誇大広告等の禁止(法第43条)

特定商取引法は、誇大広告や著しく事実と相違する内容の広告による消費者トラブルを未然に防止するために、役務の内容などについて、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。

3.禁止行為(法第44条)

特定商取引法は、特定継続的役務提供における、以下のような不当な行為を禁止しております。

4.書類の閲覧等(法第45条)

「前払方式」で5万円を超える特定継続的役務提供を行う事業者に対しては、消費者が事業者の財務内容などについて確認できるよう、その業務及び財産の状況を記載した書類(貸借対照表、損益計算書など)を用意しておくことや、それを消費者の求めに応じて、閲覧できるようにしておくことが義務付けられます。

5.行政処分・罰則

上記のような行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示(法第46条第1項)や業務停止命令(法第47条第1項前段)、役員等の業務禁止命令(法第47条の2第1項)等の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。

【民事ルール】

6.契約の解除(クーリング・オフ制度)(法第48条)

特定継続的役務提供の際、消費者が契約を締結した場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、書面又は電磁的記録により契約(関連商品※の販売契約を含む)の解除(クーリング・オフ)をすることができます。

なお、事業者が、事実と違うことを告げたり威迫したりすることにより、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフをしなかった場合には、上記期間を経過していても、消費者はクーリング・オフをすることができます(クーリング・オフを行う際には、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便などで行うことが薦められます。また、電磁的記録の場合には、例えば、電子メールであれば送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトのクーリング・オフ専用フォーム等であれば画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいと考えられます。)。

解説

クーリング・オフを行った場合、消費者が既に商品又は権利を受け取っている場合には、販売業者の負担によって、その商品を引き取ってもらうこと及び権利を返還することができます。また、役務が既に提供されている場合でも、消費者はその対価を支払う必要はありません。また、消費者は、損害賠償や違約金を支払う必要はなく、既に頭金など対価を支払っている場合には、速やかにその金額を返してもらうことができます。
ただし、使うと商品価値がほとんどなくなる、いわゆる消耗品(いわゆる健康食品、化粧品など)を使ってしまった場合には、クーリング・オフの規定が適用されません。

※「関連商品」とは、特定継続的役務の提供の際、消費者が購入する必要がある商品として政令で定められている商品のことです。消費者が本体の特定継続的役務提供等契約をクーリング・オフ(又は中途解約)した場合には、その関連商品についてもクーリング・オフ(又は中途解約)することができます。具体的には、以下のものが関連商品として指定されています。

エステティックについては

・ いわゆる健康食品

・ 化粧品、石けん(医薬品を除く)及び浴用剤

・ 下着類・美顔器、脱毛器

美容医療については

・ いわゆる健康食品

・ 化粧品

・ マウスピース(歯牙の漂白のために用いられるものに限る。)及び歯牙の漂白剤

・ 医薬品及び医薬部外品であって、美容を目的とするもの

語学教室、家庭教師、学習塾については

・ 書籍(教材を含む)

・ カセット・テープ、CD、CD-ROM、DVDなど

・ ファクシミリ機器、テレビ電話

パソコン教室については

・ 電子計算機及びワードプロセッサー並びにこれらの部品及び附属品

・ 書籍

・ カセット・テープ、CD、CD-ROM、DVDなど

結婚相手紹介サービスについては

・ 真珠並びに貴石及び半貴石

・ 指輪その他の装身具

クーリング・オフ(一定期間は無条件で解約できます)

7.中途解約(法第49条)

消費者は、クーリング・オフ期間の経過後においても、将来に向かって特定継続的役務提供等契約(関連商品の販売契約を含む)を解除(中途解約)することができます。その際、事業者が消費者に対して請求し得る損害賠償などの額の上限は、以下のとおりです(それ以上の額を既に受け取っている場合には、残額を返還しなければなりません。)。

A.契約の解除が役務提供開始前である場合

契約の締結及び履行のために通常要する費用の額として役務ごとに政令で定める以下の額。

エステティック 2万円
美容医療 2万円
語学教室 1万5000円
家庭教師 2万円
学習塾 1万1000円
パソコン教室 1万5000円
結婚相手紹介サービス 3万円

B.契約の解除が役務提供開始後である場合(aとbの合計額)

a 提供された特定継続的役務の対価に相当する額

b 当該特定継続的役務提供契約の解除によって通常生ずる損害の額として役務ごとに政令で定める以下の額

エステティック 2万円又は契約残額※の10%に相当する額のいずれか低い額
美容医療 5万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額
語学教室 5万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額
家庭教師 5万円又は当該特定継続的役務提供契約における1か月分の授業料相当額のいずれか低い額
学習塾 2万円又は当該特定継続的役務提供契約における1か月分の授業料相当額のいずれか低い額
パソコン教室 5万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額
結婚相手紹介サービス 2万円又は契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額

※「契約残額」とは、契約に関する役務の対価の総額から、既に提供された役務の対価に相当する額を差し引いた額のことです。

8.契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し(法第49条の2)

事業者が契約の締結について勧誘を行う際、以下の行為をしたことにより、消費者がそれぞれ以下の誤認をすることによって契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときには、その意思表示を取り消すことができます。

9. 事業者の行為の差止請求(法第58条の22)

役務提供事業者又は販売業者が以下の行為を不特定かつ多数の者に、現に行い、又は行うおそれがあるときは、適格消費者団体は、各事業者に対し、行為の停止若しくは予防、その他の必要な措置をとることを請求できます。