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訪問販売

事業者が消費者の自宅等に訪問して、商品や権利の販売又は役務の提供を行う契約をする取引のこと。キャッチセールス、アポイントメントセールスを含みます。

(以下の内容は概要です。詳しくは、特定商取引法の条文の該当部分を御覧ください。)

特定商取引法の規制対象となる「訪問販売」

1.販売形態(法第2条)

「訪問販売」とは、販売業者又は役務提供事業者(※)が、営業所等以外の場所(例えば、消費者の自宅)で契約を締結等して行う商品、特定権利の販売又は役務の提供等のことをいいます。

解説
特定商取引法における訪問販売、通信販売、電話勧誘販売に関する規定は、原則全ての商品・役務と特定権利について対象になります。
解説
最も一般的な訪問販売は、消費者の住居をセールスマンが訪問して契約を行うなどの販売方法です。そのほか、喫茶店や路上での販売、またホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売のうち、期間、施設等からみて、店舗に類似するものとは認められないものも訪問販売に該当します。

また、特定の方法によって誘った客に対して、通常の店舗等で契約を締結等して行う商品、権利の販売や役務の提供のことも意味します。

解説
営業所等で締結された契約であっても、「訪問販売」に該当する場合があります。例えば、路上等営業所以外の場所で消費者を呼び止めて営業所等に同行させて契約を締結させる場合(いわゆるキャッチセールス)や、電話や郵便、SNS等で販売目的を明示せずに消費者を呼び出したり、「あなたは特別に選ばれました」等、他の者に比べて著しく有利な条件で契約できると消費者を誘って営業所等に呼び出したりして契約を締結させる場合(いわゆるアポイントメントセールス)がそれに当たります。

※「販売業者又は役務提供事業者」とは、販売又は役務の提供を業として営む者を意味します。業として営むとは、営利の意思を持って、反復継続して取引を行うことをいいます。なお、営利の意思の有無については、その者の意思にかかわらず、客観的に判断されることになります。

2.特定権利

特定権利とは、以下の権利をいいます。

  • 施設を利用したり、役務の提供を受ける権利のうち、国民の日常生活に関する取引において販売されるものであって政令で定められているもの
  • 社債その他の金銭債権
  • 株式会社の株式、合同会社、合名会社若しくは合資会社の社員の持分若しくはその他の社団法人の社員権又は外国法人の社員権でこれらの権利の性質を有するもの

3.適用除外(法第26条)

以下の場合等には、特定商取引法が適用されません。

  • 営業のため、又は営業として締結するもの
  • 海外にいる人に対する販売又は役務の提供
  • 国、地方公共団体が行う販売又は役務の提供
  • 特別法に基づく組合、公務員の職員団体、労働組合がそれぞれの組合員に対して行う販売又は役務の提供
  • 事業者がその従業員に対して行う販売又は役務の提供の場合
  • 株式会社以外が発行する新聞紙の販売
  • 他の法令で消費者の利益を保護することができる等と認められるもの(例:金融商品取引法に基づき登録を受けた金融商品取引業者が行う販売又は役務の提供)

訪問販売に対する規制

【行政規制】

1.事業者の氏名等の明示(法第3条)

事業者は、訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って、消費者に対して以下のことを告げなければなりません。

  • 事業者の氏名(名称)
  • 契約の締結について勧誘をする目的であること
  • 販売しようとする商品(権利、役務)の種類

2.再勧誘の禁止等(法第3条の2)

事業者は、訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があることを確認するように、努めなければなりません。

消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続すること、その後改めて勧誘することが禁止されています。

3.書面の交付(法第4条、法第5条)

事業者は、契約の申込みを受けたとき又は契約を締結したときには、以下の事項を記載した書面を消費者に渡さなければなりません。

  • 商品(権利、役務)の種類
  • 販売価格(役務の対価)
  • 代金(対価)の支払時期、方法
  • 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  • 契約の申込みの撤回(契約の解除)に関する事項(クーリング・オフができない部分的適用除外がある場合はその旨含む。)
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 契約の申込み又は締結を担当した者の氏名
  • 契約の申込み又は締結の年月日
  • 商品名及び商品の商標又は製造業者名
  • 商品の型式
  • 商品の数量
  • 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
  • 契約の解除に関する定めがあるときには、その内容
  • そのほか特約があるときには、その内容
解説
このほか消費者に対する注意事項として、書面をよく読むべきことを、赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。また、クーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。さらに、書面の字及び数字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。

4.禁止行為(法第6条)

特定商取引法は、訪問販売において以下のような不当な行為を禁止しています。

  • 契約の締結について勧誘を行う際、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、事実と違うことを告げること
  • 契約の締結について勧誘を行う際、故意に事実を告げないこと
  • 契約を締結させ、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、相手を威迫して困惑させること
  • 勧誘目的を告げない誘引方法(いわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールスと同様の方法)により誘引した消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で、契約の締結について勧誘を行うこと

5.行政処分・罰則

上記のような行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示(法第7条第1項)や業務停止命令(法第8条第1項前段)、役員等の業務禁止命令(法第8条の2第1項)等の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。

【民事ルール】

6.契約の申込みの撤回又は契約の解除(クーリング・オフ制度)(法第9条)

訪問販売の際、消費者が契約を申し込んだり、締結したりした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、書面又は電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)ができます。

なお、事業者が、クーリング・オフに関する事項につき事実と違うことを告げたり、威迫したりすることによって、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、上記期間を経過していても、消費者はクーリング・オフをすることができます(クーリング・オフを行う際には、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便等で行うことが薦められます。また、電磁的記録の場合には、例えば、電子メールであれば送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトのクーリング・オフ専用フォーム等であれば画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいと考えられます。)。

解説
クーリング・オフを行った場合、消費者は、既に商品又は権利を受け取っている場合には、販売業者の負担によって、その商品を引き取ってもらうことや、権利を返還することができます。また、商品が使用されている場合や、役務が既に提供されている場合でも、その対価を支払う必要はありません。また、消費者は、損害賠償や違約金を支払う必要はなく、既に頭金等の対価を支払っている場合には、速やかにその金額を返してもらうとともに、土地又は建物その他の工作物の現状が変更されている場合には、無償で元に戻してもらうことができます。
ただし、使うと商品価値がほとんどなくなる、いわゆる消耗品(いわゆる健康食品、化粧品等)を使ってしまった場合や、現金取引の場合であって代金又は対価の総額が3000円未満の場合には、クーリング・オフの規定が適用されませんので注意してください。
クーリング・オフ(一定期間は無条件で解約できます)

7.過量販売契約の申込みの撤回又は契約の解除(法第9条の2)

訪問販売の際、消費者が通常必要とされる量を著しく超える商品(役務・政令で定める権利)を購入する契約を結んだ場合、契約締結後1年間は、契約の申込みの撤回又は契約の解除ができます(消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったときは例外です。)。

この際の清算ルールは、クーリング・オフと原則同様の清算ルールが適用されます。

8.契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し(法第9条の3)

事業者が、契約の締結について勧誘する際、以下のような行為をしたことにより、消費者がそれぞれ以下のような誤認をすることによって契約の申込みやその承諾の意思表示をしたときには、その意思表示を取り消すことができます。

  • 事実と違うことを告げられた場合であって、その告げられた内容が事実であると誤認した場合
  • 故意に事実を告げられなかった場合であって、その事実が存在しないと誤認した場合

9.契約を解除した場合の損害賠償等の額の制限(法第10条)

クーリング・オフ期間の経過後、例えば代金の支払遅延等、消費者の債務不履行を理由として契約が解除された場合には、事業者から法外な損害賠償を請求されることがないように、特定商取引法は、事業者が以下の額を超えて請求できないことを定めています。

  • 商品(権利)が返還された場合、通常の使用料の額(販売価格から転売可能価格を引いた額が、通常の使用料の額を超えているときにはその額)
  • 商品(権利)が返還されない場合、販売価格に相当する額
  • 役務を提供した後である場合、提供した役務の対価に相当する額
  • 商品(権利)をまだ渡していない場合(役務を提供する前である場合)、契約の締結や履行に通常要する費用の額

これらに法定利率による遅延損害金の額が加算されます。

10.事業者の行為の差止請求(法第58条の18)

事業者が以下の行為を不特定かつ多数の者に、現に行い、又は行うおそれがあるときは、適格消費者団体は、事業者に対し行為の停止若しくは予防、その他の必要な措置をとることを請求できます。

  • 契約の締結について勧誘を行う際、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、事実と違うことを告げる行為
  • 契約の締結について勧誘を行う際、故意に事実を告げない行為
  • 契約を締結させ、又は契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるため、威迫して困惑させる行為
  • 消費者に不利な特約、契約解除に伴う損害賠償額の制限に反する特約を含む契約の締結行為

11.公益社団法人日本訪問販売協会の「訪問販売消費者救済基金制度」について(法第29条の2)

公益社団法人日本訪問販売協会は、特定商取引法の規定により、会員の訪問販売に係る契約を解除し、又は契約の申込み若しくはその承諾の意思表示を取り消して会員に支払った金銭の返還を請求した消費者に対し、会員から正当な理由なく金銭の返還がなされない場合に、「訪問販売消費者救済基金」として会員から積み立てた基金から一定額の金銭を交付する業務も行っています。