データ入力の仕事を提供すると言われた契約した。
相談内容
ネットで探した在宅ワークの会社X社に資料請求のため名前と住所を登録した。後日X社から電話があり、「仕事は保険会社とその他金融会社のデータ入力であること、A、B、Cランクがあるが一番下のCランクからはじめること、データ入力にY社の専用業務サーバーを使用するのでその費用等として48万円がかかるが、クレジットカードのリボ払い(3年)にすれば負担にならないこと、またデータ入力の仕事により毎月最低でも6万円の収入になるので大丈夫です」と、約1時間にわたり説明を受けた。
A氏の説明にやる気があると答えたところ、電話のあった翌日にX社の別の担当者から、「在宅ワークのスタッフとして採用を決定した。契約日を本日にする。当社から契約書等資料を送る」旨の電話があった。翌日同じ担当者から、「クレジットカードには利用枠があるので、当方でクレジット会社に確認する。あなたの番号と有効期限を教えて欲しい」と電話があったので、Z社の自分のカード情報を教えた。その後、「あなたの利用枠は40万円であるので、残金(8万円)は現金支払になるが、当社へ翌々日中に振り込んで欲しい。振込んだら連絡ください。」と言われた。
契約日の2日後、X社から資料などが送られてきた。資料には、特定商取引法第55条第1項に基づく概要書面であると記載され、20日間のクーリング・オフの表示もある。また、代表者の氏名も記載されている。クレジット申込書も同封されており、必要事項を書いて送り返すようになっている。残金の振り込み期限は書面の到着した本日であるが、まだ振り込んでいない。
業務はY社から提供されると聞いていたが、概要書面からはその詳細がつかめない。また、48万円もの大金の契約であるので契約書に署名し、返送してよいものか迷っている。また、このような契約は契約自体問題ないのであろうか。
- この事例のように、販売する商品や提供される役務を利用する仕事を提供するのでそれに従事することにより利益が得られると言って誘引し、商品を販売したり、サービスを受けさせる取引を業務提供誘引販売取引といいます。
ここに注意!
特定商取引法では、業務提供誘引販売業を行う者は、勧誘に先立って、その相手方に対し、自らの氏名又は名称、商品等の種類、及び金銭上の負担(特定負担)を伴う取引についての勧誘をする目である旨明示しなければなりません。
仕事に就くために、仕事の提供やあっせんをする事業者から商品を購入したり、高額な加盟料等を負担しなければならないということは、常識的に考えにくいところです。また、最初に高額な商品を購入するが業務が提供され収入が得られるのでクレジットでの返済も容易であると思っても、実際には思ったような収入が得られないこともあります。また、販売される商品が教材等でその教材等によって自己研修することを求めているような場合には、仕事の提供に当たって、契約者の能力が仕事を提供する能力に達していないなどとして、事業者が仕事の提供を渋るケースなども多く見られています。契約の前に、業務を実際に提供するとされている会社に詳しい説明を求めたり、ホームページで当該事業者の情報を点検するなど、慎重に対応することが必要です。
- 業務提供誘引販売業を行う者には、特定商取引法によって、その業務提供誘引販売業の概要について記載された書面及び契約内容を明らかにした書面の交付が義務付けられています。
- 合格率、合格者数、仕事量、平均収入などはこれらの書面をもらって良く確認しましょう。
消費者の方々へのアドバイス
- 業務提供誘引販売業を行う者は業務提供誘引販売取引における氏名等の明示が義務づけられています。事業者は、その勧誘に先立って、その相手方に対して業者の氏名又は名称、特定負担を伴う取引について勧誘をする目的である旨、商品(役務)の種類を明らかにしなくてはなりません。(法第51条の2)
- 特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をするためのものであることを隠して同行させた者等に対し、公衆の出入りする場所以外の場所(例:事業者の事務所、個人の住居、ホテルの部屋や会議室、公共施設等の会議室、カラオケボックス、貸し切り状態の飲食店等)で勧誘することは禁止されています。(法第52条3項)
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契約書面を受領した日から20日間はクーリング・オフができます。
事業者の側に不実告知又は威迫行為があり、消費者が誤認又は困惑してクーリング・オフを行わなかったときは、クーリング・オフ期限が延長されます。(法第58条) - 勧誘に際して事業者側の不実告知や重要事項の故意の不告知により消費者が誤認して行った契約の申込みや承諾の意思表示は、取消しができます。(法第58条の2)
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クレジット契約をしようとする場合は、信販会社は、加盟店が業務提供誘引販売取引業を一部でも行っている場合には、業務提供誘引販売取引に該当するか否かを確認するため、消費者に対する本人確認に際し、「販売契約(又は役務の提供契約)の締結に際して、仕事が提供される、又は、仕事があっせんされるという勧誘はありませんでしたか。」、「提供又はあっせんされた仕事の報酬で商品の代金を支払うつもりはありませんか。」と明示的に聞いて確認することが求められています。
信販会社には、販売業者から受けた勧誘の内容や受領した契約書面やパンフレットなどの内容を出来る限り詳しく説明するようにしましょう。
【契約をしてしまったら】
<1.クーリング・オフ制度>
業務提供誘引販売取引の場合には、事業者から契約内容を記載した書面を受領してから20日以内であれば、書面によりクーリング・オフ(契約の解除)ができます。
<2.契約の意思表示の取消>
勧誘に際して事業者側の不実告知や重要事項の故意の不告知により消費者が誤認して行った契約の申込みや承諾の意思表示は、取消しができます。
<3.クーリング・オフ妨害があった場合>
事業者の側に不実告知又は威迫行為があり、それにより消費者が誤認又は困惑してクーリング・オフを行わなかったときは、契約内容を記載した書面を受領してから20日を経過していても、新たにクーリング・オフができる旨を明示した書面を交付した日から20日経過するまでクーリング・オフができます。