温水器の点検で業者を家に入れたら、活水器の勧誘を始めた
相談内容
2009年9月、「温水器の点検について説明に伺っています」と突然訪問販売事業者Xが訪問してきた。住んでいるマンションには全室温水器がついているので、マンションの関係者からの説明と思い家に上がってもらった。
最初は水垢を取り出す方法を詳しく説明し、定期的に手入れをすると温水器は10年近く使えるという説明をしたが、突然活水器Yを持ち出し、「セラミック製の活水器Yを取り付けると水を浄化する作用がはたらいて水垢が出なくなります。手入れが不要になるだけでなく、温水器の寿命も5~6年は伸びます。取り付けてはいかがですか?」と勧められた。強制的ではなかったが、日曜日は相談する管理人もおらず、断りにくい状況だったので、取り付けるとしても次の休日にと伝えた。しかし、Xはどこかに電話をかけた後「今日なら在庫があるのですぐに取付けが出来ます」と言い、断り切れず取り付けることになった。
支払は40万円で、集金代行のZの手続きをとれば、11月の指定日に一括でA銀行から引き落としができるというので、契約の書面と一緒にZの書類を書いた。アフターサービスは、修理が365日24時間対応とのことである。
転居の場合の取り外し及び取付けもすべて無料と言うことで、その規約兼同意書は改めて郵送するとのことであった。
事業者の訪問から3日後、管理人に会って確認したところ、Xはマンションとは何ら関係がなく、Yの購入の必要性もないことを聞かされた。Xにはクーリング・オフを電話で申し出たが、これでクーリング・オフできているであろうか。
ここに注意!
特定商取引法では、契約書面を受領した日から8日間は売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除(クーリング・オフ)を行うことができます。法律では、クーリング・オフは書面で行うことと定められています。また、クーリング・オフの効力はその書面を発した時となっています。
参考
- 特定商取引法では、原則すべての商品、役務が同法の対象となっています。したがって、書面の交付やクーリング・オフ制度についても、一部の例外を除き対象となっています。
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他の法令の規制があるため同法の適用が除外されるもの
- 金融取引に関するもの(例:有価証券の売買、預貯金業務、保険の引受等)
- 通信・放送に関するもの(例:電話、インターネット接続サービス、ケーブルテレビ、衛星放送等)
- 運輸に関するもの(例:航空運送事業、鉄道事業、バス・タクシー、フェリー等の運送等)
- 法律に基づく国家資格を得て行う業務に関するもの(例:公認会計士、土地家屋鑑定士、行政書士、税理士、社会保険労務士等)
- その他類型(例:商品取引、自動車整備業、倉庫業、国民年金、信用購入斡旋、積立式宅地建物販売、海外商品取引、商品投資顧問業、不動産特定共同事業、裁判外紛争解決手続等)
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同法は適用されるが、部分的に適用除外される取引(訪問販売、電話勧誘販売)
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書面交付及びクーリング・オフが適用除外されるもの
当該役務の全部の履行が契約の締結後直ちに行われることが通例の役務
(例:キャッチセールスで行われる飲食店、マッサージ、カラオケボックス等) -
クーリング・オフの適用除外
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購入者等との間で販売条件等の交渉が相当の期間にわたり行われるのが、通常の取引態様である商品・役務
(例:自動車販売、自動車リース等) -
契約締結後速やかに提供されない場合には、その提供を受ける者の利益を著しく害するおそれのある役務
(例:熱の供給、葬儀等) -
商品の使用、一部の消費により価値が著しく減少するおそれがある商品を使用し又はその全部若しくは一部を消費したとき(消費させた場合を除く)
(例:化粧品、毛髪用材、石けん、配置薬等8品目) -
少額取引
3,000円未満の現金取引
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購入者等との間で販売条件等の交渉が相当の期間にわたり行われるのが、通常の取引態様である商品・役務
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書面交付及びクーリング・オフが適用除外されるもの
消費者の方々へのアドバイス
- 特定商取引法では、訪問販売における氏名等の明示が義務づけられています。事業者は、その勧誘に先立って、その相手に対して事業者の氏名または名称、勧誘の目的で来訪した旨、商品やサービスの種類を明らかにしなくてはなりません。(法第3条)
- 事業者は訪問販売に係る当該売買契約又は当該役務提供契約を締結しない旨の意思表示をした者に対し、引き続き又は再度訪問し、当該契約について勧誘することは禁止されています。(法第3条の2)
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事業者が訪問販売をし、消費者から申込みを受けた際に、商品又は役務の価格、代金の支払時期、方法等について記載した書面を交付することが義務づけられています。
(法第4条、法第5条) -
訪問販売で勧誘する際の事業者の次のような行為は、特定商取引法で禁止されています。
(法第6条第1項~第3項)
事実と異なることを言って勧誘すること
重要な事項を故意に告げないこと
威迫して困惑させること -
販売目的を隠して同行させた者等に対し、公衆の出入りする場所以外の場所(例:事業者の事務所、個人の住居、ホテルの部屋や会議室、公共施設等の会議室、カラオケボックス、貸し切り状態の飲食店等)で勧誘をすることは禁止されています。
(法第6条4項) -
法定書面を受領した日から8日間はクーリング・オフができます。
例えば工事契約の場合などの訪問販売による契約は、契約内容を記載した書面を受領してから8日以内であれば、工事が終わっていても損害賠償又は違約金の請求を受けることなく、書面によりクーリング・オフ(契約の解除)ができます。クーリング・オフの結果、事業者は無償で原状に回復することが求められます。工事が終了してしまったからといってクーリング・オフができなくなる訳ではありません。
また、例えばキャッチセールスやアポイントメントセールスの場合などは営業所で契約をしても特定商取引上では訪問販売となり、契約内容を記載した書面を受領してから8日以内であれば、書面によりクーリング・オフ(契約の解除)ができます。
また、事業者の側に申込みの撤回等について不実告知又は威迫行為があり、それにより消費者が誤認又は困惑してクーリング・オフを行わなかったときは、契約内容を記載した書面を受領してから8日を経過していても、新たにクーリング・オフができる旨を明示した書面を受領した日から8日間が経過するまでクーリング・オフができます。
(法第9条) -
訪問販売で、申込者に契約を締結する特別な事情がなく、日常生活において通常必要とされる分量等を著しく超える契約(いわゆる過量販売)となっている契約部分については、その契約の申込みの撤回や解除を行うことができます。
(法第9条の2) -
勧誘に際して事業者側の不実告知や重要事項の故意の不告知により消費者が誤認して行った契約の申込みや承諾の意思表示は、取消しができます。
(法第9条の3)