無料着付け教室に参加していたら、着物や帯を強引に売りつけられた
相談内容
Xの「無料着付け教室」という広告を見て、当該教室の申込みをした。「1回目は帯のセミナーなので、指定した日時に必ず受講してください。もし都合の悪い方は他の日に振り替えますので、必ず受講するようにしてください。」と言われた。
セミナー当日の会場は、普段は業者が着物や帯を購入するという、事業者専用の販売場所であった。普段は一般の顧客は出入りできない場所だが、セミナー受講者だけ特別に入れると言われた。会場に入ると、たくさんの帯や着物が展示してあり、「好きな帯を選んで、膝の上に乗せてください。」と指示され、「デパートで購入すると何百万もするが、ここでは数十万円で買える。」と突然購入を勧めるようなことを言われた。セミナー中だったので、勝手に会場から出ていくこともできず、「クレジットにすれば、月8千円で大丈夫。」「旦那さんに内緒にすればいい。」「パートで少し働けばいい。」等と執拗な勧誘を受けた。
このセミナーが帯の販売会であるということを事前に説明されず、騙されて会場に連れて行かれ、断り切れない状況の中で、無料の着付け教室のことも気になって、やむを得ずその場で50万円の帯の契約をしてしまった。解約できないだろうか。
ここに注意!
特定商取引法では、「事業者が電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ若しくは電子メールにより、若しくはビラ若しくはパンフレット等を配布し、(中略)当該売買契約等の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所その他特定の場所への来訪を要請すること」をアポイントメントセールスとして定義し、同法における訪問販売の規制類型に含めています。
上記の場合は、販売を目的とした勧誘を受けていません。また、通常事業者しか入れない場所に連れて行かれていますから、訪問販売に当たる可能性があります。訪問販売であれば、契約書面を受領した日から8日間はクーリング・オフを行うことができます。
消費者の方々へのアドバイス
- 例えば、「あなたは選ばれたので○○を取りに来てください」と告げる場合や、本来の販売の目的たる商品等以外のものを告げて呼び出す場合が本号に該当することになる。なお、勧誘の対象となる商品等について、自らそれを扱う販売業者等であることを告げたからといって、必ずしも当該商品について勧誘する意図を告げたものと解されるわけではない。例えば、こうした場合であっても、「見るだけでいいから。」と告げるなど販売意図を否定しているときや、着物の着付け教室と同会場で着物の即売会が行われる場合において、実際には着物を購入しなければ講習自体も受けられないにもかかわらず、着付け教室のみの参加が可能であるように表示するなどしているときには、当該商品について勧誘する意図を告げたことにはなりません。
- 特定商取引法では、訪問販売における氏名等の明示が義務づけられています。事業者は、その勧誘に先立って、その相手に対して事業者の氏名または名称、勧誘の目的で来訪した旨、商品やサービスの種類を明らかにしなくてはなりません。(法第3条)
- 事業者が訪問販売をし、消費者から申込みを受けた際に、商品又は役務の価格、代金の支払時期、方法等について記載した書面を交付することが義務づけられています。(法第4条、法第5条)
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訪問販売で勧誘する際の事業者の次のような行為は、特定商取引法で禁止されています。 (法第6条第1項~第3項)
事実と異なることを言って勧誘すること
重要な事項を故意に告げないこと
威迫して困惑させること - 販売目的を隠して同行させた者等に対し、公衆の出入りする場所以外の場所(例:事業者の事務所、個人の住居、ホテルの部屋や会議室、公共施設等の会議室、カラオケボックス、貸し切り状態の飲食店等)で勧誘をすることは禁止されています。(法第6条4項)
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契約書面を受領した日から8日間はクーリング・オフができます。
また、事業者の側に不実告知又は威迫行為があり、消費者が誤認又は困惑してクーリング・オフを行わなかったときは、クーリング・オフ期限が延長されます。(法第9条) -
訪問販売で、申込者に契約を締結する特別な事情がなく、日常生活において通常必要とされる分量等を著しく超える契約(いわゆる過量販売)となっている契約部分については、その契約の申込みの撤回や解除を行うことができます。
(法第9条の2) -
勧誘に際して事業者側の不実告知や重要事項の故意の不告知により消費者が誤認して行った契約の申込みや承諾の意思表示は、取消しができます。(法第9条の3)
【契約をしてしまったら】
<1.クーリング・オフ制度>
例えば工事契約の場合などの訪問販売による契約は、契約内容を記載した書面を受領してから8日以内であれば、工事が終わっていても損害賠償又は違約金の請求を受けることなく、書面によりクーリング・オフ(契約の解除)ができます。クーリング・オフの結果、事業者は無償で原状に回復することが求められます。工事が終了してしまったからといってクーリング・オフができなくなる訳ではありません。
また、例えばキャッチセールスやアポイントメントセールスの場合などは営業所で契約をしても特定商取引では訪問販売となり、契約内容を記載した書面を受領してから8日以内であれば、書面によりクーリング・オフ(契約の解除)ができます。
<2.契約の意思表示の取消し>
勧誘に際して事業者側の不実告知や重要事項の故意の不告知により消費者が誤認して行った契約の申込みや承諾の意思表示は、取消しができます。
<3.クーリング・オフ妨害があった場合>
事業者の側に不実告知又は威迫行為があり、それにより消費者が誤認又は困惑してクーリング・オフを行わなかったときは、契約内容を記載した書面を受領してから8日を経過していても、新たにクーリング・オフができる旨を明示した書面を受領した日から8日間が経過するまでクーリング・オフができます。